Ⅰ. 医療費助成制度(都道府県)

難病や子どもの慢性疾患に対する医療費助成の制度が2015(平成27)年1月1日から変わりました。難病や小児慢性特定疾病に関する調査研究の推進や療養環境の整備、患児の自立支援の推進、医療費助成制度の整備を図るために、「難病の患者に対する医療等に関する法律」と「児童福祉法の一部を改正する法律」が施行され、医療費助成の対象となる指定難病(=特定疾患)は、従来の56疾患から306疾患に、小児慢性特定疾患は従来の514疾患から704疾患へと対象疾患が拡大。 表皮水疱症は、新たな重症度基準に応じて診断判定がなされることから、単純型を含め病型を問わず該当しますが、基準は、常に水疱びらんがあり、在宅処置として創傷被覆材(特定保険医療材料)を使用する必要のある患者となります。 一方、小児慢性特定疾病事業において表皮水疱症は、これまで接合部型(致死性ヘルリッツ型)のみが対象でしたが、今回の対象疾患群に「皮膚疾患」が加わり、病型を問わず対象となりました。 詳細は、各都道府県又は指定都市の保健福祉担当窓口や保健センターにご相談ください。

■ 医療費助成制度の新たなポイント
  1. 表皮水疱症は病型を問わず、重症度基準に応じて指定難病に認定されます。
  2. 診断判定として、常に水疱びらんがあり、在宅処置として創傷被覆材(特定保険医療材料)を使用する必要のある場合。
  3. 自己負担割合は3割から2割に引き下げられました。
  4. 月額自己負担上限額は、世帯所得や治療状況に応じて設定されました。
  5. 「外来」と「入院」の自己負担限度額が一本化されました。
  6. 受診の際、『自己負担上限額管理票』を受給者証と提出。
  7. 小児慢性特定疾病では、表皮水疱症は病型を問わず対象に。
  8. 小児慢性特定疾病での自己負担割合は指定難病の2分の1。
  9. 自己負担上限額は複数の指定医療機関医療費を合算。
  10. 受給者証更新者は3年間(平成29年12月31日まで)経過措置が受けられる。
  11. 医療費助成の支給対象は指定医療機関(院外薬局・訪問看護)と指定医のみ。
  12. 支給認定で非該当とされた場合、異議申立が可能。
<小児慢性特定疾病とは(平成27年1月1日以降)>

以下の要件の全てを満たすもののうちから、厚生労働大臣が定める疾病をいいます。

  • 慢性に経過する疾患であること
  • 生命を長期に脅かす疾病であること
  • 症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾病であること
  • 長期にわたって高額な医療費の負担が続く疾病であること

<対象年齢> 18歳未満の児童。 ただし、18歳到達後も引き続き治療が必要と認められる場合には、20歳未満の者を含む。

1.指定難病(特定疾患)の医療費助成
■所得に応じた自己負担割合と上限額

指定難病医療費助成自己負担額割合と上限額

(平成27年1月からの新たな自己負担/月額・円)

2.小児慢性特定疾病の医療費助成
■所得に応じた自己負担割合と上限額 (平成27年1月からの新たな自己負担/月額・円)

小児慢性特定疾病の医療費助成

3.在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料
(衛生材料と特定保険医療材料支給に関する保険制度)

表皮水疱症患者にとって、毎日、生涯にわたり使い続ける必要のある膨大な量の各種ガーゼや包帯等の医療材料は、自身で調達し、自費で購入しなければならなかったことは、長年の苦闘であり、また経済的負担も多大なものがありました。 表皮水疱症友の会では、DebRA Internationalとの連携により 、表皮水疱症に必要不可欠な医療材料等は欧米と同様に国費支給であるべきと、署名活動を行い、国会や厚生労働省等陳情が契機となり、2010(平成22)年4月1日の診療報酬 改定で「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料」が制度化されました。 皮膚科または形成外科を担当する医師が、表皮水疱症患者の皮膚処置に関する指導を行うと在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料(500点)が算定できる。この指導管理料には、患者に提供するガーゼ・包帯・絆創膏などの衛生材料が含まれる。また、この指導管理料を算定している患者に対して特定保険医療材料を提供し、その費用を保険請求することができる。

C114 在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料
  1. 皮膚科又は形成外科を担当する医師が、別に厚生労働大臣が定める疾患の患者であって、在 宅において皮膚処置を行っている入院中の患者以外のものに対して、当該処置に関する指導管理を行った場合に算定する。
  2. 難病外来指導管理料又は皮膚科特定疾患指導管理料を算定している患者については、算定しない。
    1. 在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料は、表皮水疱症患者であって、難治性の皮膚病変に対 する特殊な処置が必要なものに対して、水疱、びらん又は潰瘍等の皮膚の状態に応じた薬 剤の選択及び被覆材の選択等について療養上の指導を行った場合に、月1回に限り算定する。
    2. 特定保険医療材料以外のガーゼ等の衛生材料は当該指導管理料に含まれる。
    3. 当該指導管理料を算定している患者に対して行う処置の費用(薬剤及び特定保険医療材料に 係る費用を含む。)は別に算定できる。

(厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」平成22年より抜粋) 引き続きの陳情により、翌2011(平成23)年12月12日付通達が公布され、懸案事項だった水疱穿刺器具(使い捨て注射針・替え刃等)の在宅使用の保険算定が認められました。 針やメス刃については、患者もしくは患者の家族が、自ら水疱の処置を目的として使用することは、薬事法上問題ないことから、医学的に必要があれば、患者に提供して差し支えない。

2012(平成23)年12月12日付「疑義解釈資料」厚生労働省保険局医療課通達

さらに翌2012(平成24)年度診療報酬改定では管理料500点から1,000点に引き上げられ、その結果、表皮水疱症患者が自宅で使用する医療材料費等の自己負担額が大幅に軽減されることになりました。

「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料」保険制度

用材の区分け 保険算定 主な医療材料製品
一般医療材料
通常の医療ガーゼと同様、 基本診療料や管理料の点数に包括される、一般医療機器扱いのもの。
表皮水疱症患者に対して月1回、1,000点の処置指導管理料に含まれる。これらは医師が指導管理を行う「技術料」+「ガーゼ等の衛生材料代」となり、必ず10,000円分のガーゼが出るものではありません。 一般医療用ガーゼ、メロリン、デルマエイド、テープ、メピテルワン、メピレックストランスファーなど。 使い捨て注射針、替え刃メス等。
特定保険医療材料
特殊ガーゼと称する、 厚生労働大臣の承認認可を受けたもの。
処置指導管理料を算定している表皮水疱症患者に対し、別途、使用量に応じて医療保険から支給。これらは在宅処置用の用材として、製品のクラスに関係なく必要な分だけ支給されます。 アクアセルAg、イントラサイトジェル、ハイドロサイトADジェントルほか。 ウルゴチュール。メピレックス、メピレックスライト、メピレックスボーダー、メピテル、メピレックスAgほか。

■表皮水疱症患者対象の医療材料等の保険制度の概要

  1. 支給方法
    • 大学病院など難病指定病院の専門医、皮膚科医に受診され、ご相談してください。支給される医療材料等は、欲しいものをもらえる、ということではなく、皮膚科医による症状の診断と指導のもとで適切な種類と数量を選ぶ必要があります。
  2. 主な医療材料の種類
    • 被覆材を初めて使う場合は、必ずサンプル等で試してみてください。皮膚の状態や傷の症状によって、必ず効果があるものとは限りません。
  3. 自己負担
    • 2015年1月1日より難病法の施行により、特定医療費(指定難病)受給者証、加入している医療保険の種類、生計中心者の所得税額(市民税額)、さら小児慢性特定疾病等各制度によって自己負担額が変わってきます。 詳しくは、受診医療機関、お住い地域の保健所、保健センターまでお問合せください。
  4. 単純型の場合
    • 難病法のもとで単純型でも医療費助成制度が適用されますが、③と同様自己負担が発生します。
  5. 医療機関と医師の対応
    • 医療材料の選択において、医療機関の採用基準や医師の指導上、使いたい製品が取り扱われていないことや、希望する使用量が提供されないこともあります。主治医や病院内の医療相談室、医療ソーシャルワーカーのほか、友の会にもご相談ください。

Ⅱ. 子ども医療費等助成制度(各自治体)

難病を持っていても、いなくても、子育てにかかる負担軽減のための助成のうち、児童手当、子ども医療費助成等制度が各自治体、各市町村によって利用できます。 実際、どんな助成制度があるのか、窓口負担がどのくらい減免されるのか等、詳しくはお住まいの市区町村担当部署にお問い合わせください。

  1. 重度心身障がい者医療費助成
  2. 乳幼児(等)医療費助成
  3. こども医療費助成
  4. 自立支援医療制度
  5. 児童手当
  6. 療育の給付
  7. 難病見舞金

Ⅲ. 表皮水疱症の医療費助成に関するQ&A

Q. 私は、単純型表皮水疱症です。これまで医療費の助成が受けられなかったのですが、どうなりますか?
A. 表皮水疱症の主たる3つの病型のうち、特定疾患として医療費の公費負担が認められていたのは、「接合部型」と「栄養障害型(優性・劣性)」のみでしたが、新しい難病の診断基準により、「単純型表皮水疱症」はもちろん、どの病型であっても、日常生活に支障がともなう程度の症状が認定されれば、医療費助成の対象となります。また、症状の程度が重症度分類等で一定以上に該当しない者であっても、「高額な医療を継続」することが必要な者(特定保険医療材料等の支給量など)については、医療費助成の対象とみなされます。
Q. 今年、中学生になった患児の親です。これまで特定疾患受給者症を持っていましたが、今年になって、保健センターから小児慢性特定疾病を申請するように勧められました。何がどう違うのでしょうか。
A. 小児慢性と特定疾患の医療費助成面で大きな違いは、月の自己負担上限額です。(特定疾患の2分の1、入院時の食費も2分の1負担)。 ただ、それ以外に、「認定基準」も下記のように異なります。

  • 小児慢性
    • 常に水疱びらんがあり、在宅処置として創傷被覆材(特定保険医療材料)を使用する 必要のある場合
  • 特定疾患
    • 重症度分類で「中等症以上」を対象。

手続きは双方大きな違いはほとんどありませんが、小児慢性特定疾病の申請は、18歳までに済ませれば、20歳まで受けられます。 大きな違いは、その目的で、今回の小児慢性特定疾病における法律施行(児童福祉法一部改正)にあたり、「慢性疾患児の特性を踏まえた健全育成・社会参加の促進、地域関係者が一体となった『自立支援』の充実」という点です。 ですから、20歳を過ぎて特定疾患に移行する際には、軽症傾向がない限りはほとんど問題なく継続されるものと思われます。

Q. 小児慢性は、表皮水疱症では申請できなかったのですが。
A. これまでの表皮水疱症においては、致死型接合部型のみが小児慢性特定疾病の対象でしたので、医療者でもあまり知られていませんでした。今回の新しい法整備により、病型を問わず表皮水疱症が対象になりました。 ただし、常に水疱やびらんがあり、在宅処置として創傷被覆材(特定保険医療材料)を使用する必要が生涯にわたり継続する、という診断が基準となります。そのため、単純型が認定される一方、これまで特定疾患受給者証をもっていた場合でも、軽症程度と認定されると対象外になるケースも出てきます。
Q. 特定疾患医療受給者証や小児慢性特定疾病のいずれにしても、月額負担がありますが、中学3年生までは「子ども医療費」があって、負担額はゼロになります。それでも、小児慢性特定疾患には入るべきでしょうか?;
A. 子育て家庭の負担を軽減し、必要な医療を受けられるよう医療保険及び受給者が自己負担した額を市区町村が助成するという子どもの医療費助成制度。 各市区町村が実施主体となっている「子ども医療費助成」と国が主体の「小児慢性」どちらを申請したほうが「お得」なのか、という相談は少なくありません。 「子ども医療費制度」は、他の福祉政策と同様に社会的公平を図る観点から、真に医療費の助成が必要な人のみに助成対象者を限定するため、対象年齢・自己負担額・所得制限基準額を独自に設定していたり、都道府県と同一基準のところもあります。お住いの都道府県または市区町村のホームページで確認できます。実際、「小児慢性」や「特定疾患」と、保険適用の医療費すべてを助成する「子ども医療費助成」を比べると経済的な面からすると「子ども医療費」を選択されることになると思います。一方、小児慢性と子ども医療費助成の両方を持つことも可能です。 この場合、一旦、医療機関の窓口で小児慢性の費用を支払った後、役所で全額払い戻してもらう<償還>という手続きが必要となるケースと、市区町村または医療機関の窓口で直接支払う現物給付もあります。 当面は「小児慢性を申請してください!」と強制はされることはありません。小児慢性を申請することで、その疾患の研究が促進する、難病のお子さんの社会参加が促進するなどの説明はありますが、あくまで相談者さんの判断(手続きの面倒、診断書にかかる手間と経費、主治医の助言など)にまかせられます。 詳しくは、小児科や皮膚科の主治医や医療機関の相談室、お住いの都道府県健康福祉部保険医療課の担当窓口や保健所・保健センター等にご相談ください。
Q. 特定疾患受給者証で支給されている創傷被覆材やガーゼ等の医療材料は、小児慢性特定疾病でも支給されますか。
A. 表皮水疱症を対象に支給される在宅処置用の医療材料については、小児慢性特定疾病でも変わりなく支給されます。 ただし、小児科の医師は、小児慢性特定疾病の診断意見書は書いてもらえますが、在宅用衛生材料や創傷被覆材等の処方箋は、皮膚科、または形成外科の医師に書いてもらう必要があります。
Q. 障害者手帳の申請が通らず、車椅子の助成などはすべて自己負担でしたが、障害福祉の扱いは変わるのでしょうか。
A. 障害者総合支援法の対象疾病の対象も大幅に拡大され、表皮水疱症も対象になっています。この対象拡大によって、日常生活での深刻な障害や合併症が判断されることで、たとえ、障害者手帳がなくても、障害福祉サービスが受けられます。