表皮水疱症とは

表皮水疱症(EB)は、指定難病であり、小児慢性特定疾病にも認定されている、希少な難治性皮膚疾患です。
ほんのわずかな刺激や摩擦でも皮膚や粘膜に水疱やびらん(ただれ)を繰り返すことがあり、痛みへの対応、日々の処置、通院、合併症への不安に加えて、食事や衣類、移動など生活全体に関わる工夫が必要になる場合があります。現時点で根治に至る治療法は確立しておらず、患者数が少ないことから、正確な情報や専門的な診療にたどり着くまで時間を要するケースもあります。
このページでは、EBと向き合ううえで知っておきたい基本情報を整理して紹介します。

表皮水疱症(EB)について

EBは、日常のわずかな刺激や摩擦によって、皮膚や粘膜に水疱(水ぶくれ)やびらん(ただれ)が繰り返し生じる、遺伝性の皮膚の難病です。

本来、皮膚は「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層から成り立っており、そのうち表皮と真皮の間には「基底膜」という強靭なタンパク遺伝子が存在します。このタンパク質が層同士をしっかり固定する役割を果たし、外部刺激から体を守っています。

しかし、EB患者はこのタンパク遺伝子に変異があるため、皮膚を固定する力が弱くなり、わずかな接触でも簡単に皮膚が剥がれてしまいます。たとえば、抱き上げる・手をつかむ・硬いものにぶつける・寝返りを打つ──そんな何気ない動作でも水疱やびらんが生じ、皮膚に繰り返し傷ができます。重症の場合は、指の癒着(棍棒化)や食道狭窄、感染症、皮膚がんの合併リスクも高まります。

現時点では、この病気を根本的に治す治療法は確立されていません。毎日、全身に生じる水疱を適切に処置し、剥がれた皮膚をドレッシング材で保護しながら、痛みとともに生きていく必要があります。このように、EBは苦痛を伴う難病であり、同時に日常生活に大きな困難をもたらす障害でもあります。

EBは、1987年に特定疾患(接合部型・栄養障害型)として認定され、2015年に制定された難病医療法によって病型を問わず指定難病となりました。現在は、日常生活への障害が重く長期にわたる場合、高額医療費を自己負担せずに受けられる制度が整備されています。

欧米ではEBの症状の繊細さを「蝶の羽」にたとえ、患者さんを “バタフライ・チルドレン(Butterfly Children)” と呼ぶことがあります。蝶のモチーフは国際支援組織 DEBRA(デブラ)のシンボルとして用いられ、世界各国でEBの認知啓発活動に活かされています。

DebRA Japan(表皮水疱症友の会)は、2008年にDEBRA Internationalに加盟し、国際的な支援ネットワークの一員として活動しています。

DEBRA International ロゴ画像

EBを知るための動画

患者さんの声、家族の願い、研究者や企業の挑戦。EBをより深く知り、寄り添うための映像をご紹介します。

Science Portal 動画ニュース

Science Portal の動画ニュースでEBが取り上げられました。

STV NEWS

EBの方のために開発された “世界一やさしいチョコレート” 誕生の背景や込められた思いを映像でご覧いただけます。

TBS NEWS

EBの方々のために生まれた“世界一やさしいチョコレート”の取り組みを、丁寧に取り上げていただきました。

『表皮水疱症と生きる』動画サムネイル 21:33

YOUTUBE CHANNEL

DebRA Japan – 友の会

難病「表皮水疱症」の理解と支援を広げる、DEBRA Japan公式YouTubeチャンネル。患者さんやご家族の声、活動報告、啓発動画などを発信しています。

病型・診断について

EBは、臨床所見(皮膚症状・家族歴など)から疑われ、その後の検査によって水疱がどの層で発生しているか、皮膚構造に関わるタンパク遺伝子の変異がどの部分に起きているかを調べ、4つの病型に分類されます。

主な4つの病型

病型英語略称割合特徴の概要
単純型EBS約32%表皮内で水疱が生じる
接合部型JEB約7%表皮と真皮の境界部(接合部)で水疱が生じる
栄養障害型DEB優性21% / 劣性33%真皮側で水疱が生じ、瘢痕が残りやすい
キンドラー症候群約7%日光過敏・皮膚萎縮など多彩な症状

※新国際診断基準 Fine et al., J Am Acad Dermatol(2008)より

診断の必要性

EBが疑われた場合、早期の確定診断がとても重要です。

病型が特定されることで、症状に合った治療方針、ケアの指導、合併症への備えなど、今後の見通しが立てやすくなります。診断には、EBを専門的に診られる医療機関(主に大学病院)での受診が推奨されます。

主な検査方法

EBの確定診断には、症状を評価しつつ、皮膚の構造・タンパク質・遺伝子レベルから総合的に判断します。

検査名内容
臨床所見(診察)皮膚症状・合併症の有無・家族の遺伝形式などから推定
電子顕微鏡検査皮膚組織を高倍率で観察し、水疱が生じる層を確認
免疫組織学的検査蛍光抗体法で異常のあるタンパク分子を特定
遺伝子検査遺伝子変異の種類を調べ、病型の確定・治療方針の検討に役立つ
出生前診断胎児の染色体・遺伝子の異常を調べることが可能

※遺伝子検査は、症状が見極めやすくなる 3〜5歳頃 に実施されることもあります。

重症度判定と医療費助成

EBは病型にかかわらず、日常生活への支障が一定以上ある場合、医療費助成を受けることができます。また、以下の重症度判定基準で基準に満たない場合でも、

と認められる場合には、医療費助成の対象となります。

重症度判定基準

検査名内容
軽症3点以下
中等症4~7点
重症8点以上

重症度判定に関する留意事項

重症度の判定にはスコア表を用いますが、以下に該当する場合は点数に関係なく「重症」と認定されます。

医療費助成の判断においては次の点も考慮されます。

小児慢性特定疾病の診断基準では、水疱・びらんが常にあり、在宅で創傷被覆材(特定保険医療材料)を使用した処置が必要であることが要件となります。

詳細は公式の「重症度判定スコア表」をご確認ください。

遺伝について

表皮水疱症は、接触や空気で感染はしませんが、遺伝子の変化が受け継がれることで、次の世代にEBが現れる可能性があります。

EBは病型によって遺伝形式が異なるため、正確な病型診断は今後の家族計画を考えるうえでもとても大切です。たとえば、結婚して子どもを迎えたいと考える場合や、次のお子さんが生まれる場合など、病型がわかることで発症の可能性を予測できることがあります。

家系にEBの方がいる場合、将来のこと、自分と家族のことなど、抱える思いもさまざまだと思います。疑問や不安があるときは、どうかひとりで抱え込まず、主治医や遺伝カウンセラーにご相談ください。専門家とともに考えることで、より安心して選択できる場面が増えていきます。

患者数について

国内のEBの推定患者数は 500〜640人 と報告されています(1994年 厚生省稀少難治性皮膚疾患調査研究班による)。国や性別による発症の違いは特にありません。

ただし、この数字は「特定疾患医療受給者証(当時は単純型を除く)」の申請件数をもとにしたものであり、皮膚科専門医の見解では、軽症例も含めると1,000〜2,000人ほどの患者が存在すると推定されています。
2015年1月の難病医療法施行により、病型を問わず「特定医療費(指定難病)受給者証」の対象となりました。今後、診断と制度の利用が進むことで、より実態に近い患者数が把握されていくと考えられます。

症状について

EBでは、手足の指や関節、衣服や寝具が触れやすい部位など、刺激が加わりやすい場所にわずかな外力でも水疱(水ぶくれ)やびらん(ただれ)が生じやすいのが特徴です。

水疱やびらんは、

のどちらもあります。病型や症状の程度は人によって大きく異なります。

また、合併症として以下の症状がみられることがあります。

とくに重症型の場合、症状・合併症ともに慎重なケアと医療支援が必要となります。

治療・ケアについて

EBには、根本的に治す治療法がまだ確立されていないため、症状を和らげ、傷や痛みをできるだけ抑えて過ごすための対症療法や、日々の丁寧なケアがとても大切になります。

適切なケアは、傷の悪化や感染症を防ぐだけでなく、生活の質(QOL)を保つうえでも欠かせないものです。

一方で、国内外では治療研究が着実に進んでおり、特に栄養障害型(DEB)では大きな前進も見られています。
こうした治療法・ケアの考え方や研究の動向について、より詳しく知りたい方は、こちらのページをご覧ください。

予後について

EBの予後は人によって大きく異なります。日常生活にほとんど支障のない軽症のケースもあれば、生後まもなく重い症状が現れるケースもあります。

同じ重症型でも、生後間もなく死亡してしまう場合や、特別な医療的ケア・福祉サービス・介助や配慮などを受けながら生活する方、普通の学校に通い、進学・就職・結婚・出産といった人生の選択を歩んでいる方もいます。個々の状況に大きな幅があることはEBの大きな特徴のひとつです。

家族や兄弟姉妹の理解と協力はもちろん大切ですが、何よりも、自分の病気と向き合い、正確な病型診断にもとづいて、できるだけ早い段階から適切な治療ケアと栄養管理を行うことが、生活の質を大きく左右します。その積み重ねによって、障害があっても前向きに人生を楽しみながら生きている仲間がたくさんいます。

特に接合部型・劣性栄養障害型では、10代のうちから有棘細胞癌などの皮膚がんを併発することがあり、予後に影響する可能性があります。そのため、定期的な通院と受診を続け、生涯にわたり医療者と良いパートナーシップを築くことをおすすめします。

参考資料

関連リンク

ガイドブックを読んでわかること

  • 利用できる医療制度や在宅指導管理料がわかる
  • 保険支給製品・福祉制度を整理して把握できる
  • 日常生活で役立つ工夫や実例を知ることができる

EBに関わってくださる方に知って欲しいことを
トータルライフの視点からまとめました!