『医療的ケア児(者)としてのEB』をテーマに歯科口腔ケアの実践的な方法の講演や、脆弱な皮膚ケアを持って生きる上での自立支援のあり方についての意見交換が行われました。
勉強会ではNICUや外来看護職、皮膚科医、歯科医、口腔外科の先生たち、保育士、表皮水疱症にご支援くださっている企業のみなさま、ニュージーランドから参加のMayさんご夫妻などたくさんの方が参加してくだり、参加総数は40名を超えました。また、石河先生を始めとした東邦大学医療センター大森病院の皆様のご協力により開催できました。本当にありがとうございました。

今回は成人会員の東さんの参加レポートです。

東邦大学大森病院皮膚科教授 石河晃先生
*表皮水疱症の診断と症状、最新の治療研究報告

表皮水疱症の病型とその発症要因、在宅ケア制度の紹介や最新の治験報告など、専門医からの講演は、わかりやすくまた詳細で具体的です。
インターネット検索からは総体的なアウトラインでしかわからないことが、実際の症例として理解できる内容でした。重症度診断によって、また遺伝子検査等によって、個々の症状が違い、その治療法もまた違ってくることは予後にも影響することは大きな関心事となります。 当事者本人や家族であっても知らないことがたくさんあり、専門医からの話しを聞く機会は重要な意味を持ちます。

※水疱症には大きく「単純型」「栄養障害型」「接合部型」の3つの症状があり、型によって症状が異なります

日本大学松戸歯学部歯科総合診療学 遠藤弘康先生
*脆弱な歯と口腔ケアの早期対応が必要な理由

表皮水疱症は、体面の皮膚だけではなく、歯や口腔内の粘膜にも支障があります。歯のエナメル質が脆弱で虫歯になりやすい、硬いものを食べると口腔内が傷つきやすい、癒着により口が大きく開かないなどの症状があり、歯科治療が必要であっても実際の治療には多くの困難があります。
遠藤先生は、DebRA International※2が配信している歯と口腔ケアのガイドラインを日本語に翻訳し、日常的に役立つ内容を詳しくまとめて紹介してくださいました。治療をする際の粘膜を傷つけない対処法から虫歯治療のノウハウ、お勧めのデンタルケア製品の紹介では、サンプル品も提供されました。国内で表皮水疱症の歯科治療の情報は得難いので、貴重かつ有益な講演となりました。

※2 DebRA Internationalは、表皮水疱症の世界的な民間の支援組織で、現在世界50カ国以上が参加しています。日本もDebRA Japanとして2007年の発足時から加盟しています。

医療者と当事者家族の意見交換

訪問看護の事例を家族と医療関係者と意見交換をしました。私たちは常に体中が傷ついているため、傷の消毒、水疱や傷の治療、包帯の交換などのために毎日2時間程ケアの時間が必要です。
現在の訪問看護制度では、週3回、60分という規定があり、さらに特別指示書を書いてもらったとしても90分という制限付きで、特に重症のケースでは全く時間がたりません。しかも、特別指示書の記載項目に表皮水疱症に該当する箇所がないため、今のままでは医療的ケアが毎日必要な表皮水疱症にあって、自立を計るための社会的支援を利用することを諦めざるを得ません
高齢化する両親、成人となる当事者たちが、安心して自立出来るために、訪問看護と特別指示書の適用拡大に向けて、私たち患者会はこれから厚生労働省に働きかける必要があると医療者、看護職と参加者の合意をいただきました。

ニュージーランドのMayさん

ニュージーランドは表皮水疱症では理想的な医療体制をもつ国です。バカンスで日本に遊びにきたMayさんをお招きして、日常のケア、歯の治療、職場での対応、ケア製品やヘルパーの現状などを話してくれました。今回の旅行で、持ってきた荷物はスーツケース6個です。特に、被覆材料のはもちろん、日本では支給対象外の保湿剤など一般的なケア製品も全て国からの支給と聞いて、驚きました。体調に配慮された週3日時短の勤務体制も含め、まさに理想のEBライフに思えました。